僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「なんかカメラの中以外では違うって言われてるみたい」

クスクスと笑うと、天宮くんが慌てたような顔をした。

「いや、そういう意味で言ったんじゃなくて……」

とたんに、もじもじと動揺し始める天宮くん。

言い訳をうまく思いつかなかったか、写真を撮るのをやめてしまった。

それから突如、改まったように顔を上げる。

「あのさ、俺……」

思わずドキリとしたのは、天宮くんが急に自分を『俺』と呼んだからだ。

いつもは『僕』なのに。

たったそれだけのことが、何か特別なことを言われる前触れのような気がして、胸の鼓動が早まった。

桜の下に立つ私と、カメラを手にした天宮くん。

ポートレイトを撮るのにちょうどいい距離にいる私たちの間を、桜の花びらがさざ波のように通り抜けていく。

桜吹雪の向こうに見えるのは、天宮くんの、あの澄んだ茶色い目だった。