僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

薄桃色に染まる優しい世界に、カメラを構えた天宮くんがひとり、立っていた。

「きれいだ」

「えっ」

不意打ちでそんなことを言われ、夢うつつだった心が一気に現実に引き戻される。

驚きと羞恥心がないまぜになって、心臓が爆ぜそうになった。

天宮くんは、困惑している私をなおも撮り続けている。

きれいなんて、生まれてこの方言われたことがない。

動揺したものの、だんだん平常心を取り戻す。

モデルの気持ちを盛り上げるための、天宮カメラマンのリップサービスだと気づいたからだ。

「カメラの中の夏生さんはきれいだ」

聞いているこちらが逃げ出したくなるような恥ずかしいセリフを、躊躇することなくまた口にされた。

「それ、どういう気持ちで言ってるの?」

リップサービスなんかで、動揺するものか。

負けじと余裕の笑顔を見せると、カシャッとまたシャッターの音がした。

「そのままの気持ちで言ってるよ」