僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

三月の朝の空は、透明でどこまでも澄んでいて、心が洗われるようだった。

いまだ寒さが続いているのにどことなく気持ちが弾むのは、かすかに混ざった春を予感させる陽気のせいだろうか。

「こっちだ」

天宮くんは私の手を引いて、ぐんぐんと大通りを進んでいく。

私には土地勘がないから仕方ないのだけど、これではどっちが介助者か分からない。

土手へと続く階段まではすぐだった。

階段を上っていくにつれ、景色が開けてくる。

河津桜はちょうど見ごろのようで、あたり一面に咲き誇っていた。

花びらがひっきりなしに風に舞っていて、まるで視界を薄桃色で染め上げられたかのよう。

ベージュのパーカーの下に穿いた白のロングスカートが、寒さを残した春風にふわりと揺れた。

「きれいだね」

桜の花びらで埋めつくされた世界があまりにも絶景で、意識すら桜色に染まっていく。