僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

私たちはそのまま手をつないで病室から出た。

エレベーターに乗って受付のあるホールを過ぎても、私たちを止める人はいなかった。

まっすぐに前を向いて歩いている天宮くんは、端から見たら健全な男の子にしか見えない。

まさか脱走中の入院患者だなんて、誰ひとり思ってもいないようだった。

キャップを目深にかぶっているため、顔見知りの医師や看護師にも気づかれていないみたい。

それどころか、長椅子で会計待ちをしていたおばあさんに、生暖かい目すら向けられる。

固く手をつないでいるから、ひょっとしたらカップルにでも見えたのかもしれない。

手をつないでいるのは天宮くんの安全を守るためなんだけど、説明などできるわけがなく、急激に恥ずかしさが込み上げる。

自動ドアから、病院の外に出た。