僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

懇願されるように言われ、何も言い返せなくなってしまう。

私も桜の下で天宮くんに撮られたい。

そんな欲望が胸の奥から突き上げてきて、抗えなくなる。

気づけば小さくうなずいていた。

天宮くんに向けて、手を差し出す。

「じゃあ、手をつなごう。できるだけ離さないって約束して」

いくら慣れている道だからと言って、視力の低下している天宮くんにとって、屋外は危険がいっぱいだ。

屋内ではそれほど不自由していなくても、どうなるか分からない。

だとしても、天宮くんのことは私が守ればいい。

天宮くんの茶色の瞳が、驚いたように揺らぐ。

それから彼は、ふわりと散る花びらのような、優しい笑い方をした。

「分かった」

差し出した手に、天宮くんの大きな手が重なる。

自分のものとは違う温もりに手のひらが包まれて、泣きたいような安心感が込み上げた。

守る側の私が逆に安心をもらうなんて、おかしな話だけど。