僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

戸惑っている私をよそに、天宮くんはさっそく、黒のリュックにカメラなんかを突っ込んでいる。

上下グレーのルームウェアに黒のジャケットを羽織って黒のキャップをかぶり、スリッパからスニーカーにまで履き替えていた。

どうしたんだろう、いつになく強引だ。

「行こう。この病室、すぐそこがエレベーターだから、看護師さんにも絶対にバレないよ」

「でもやっぱり……」

天宮くんの目の状況は、たぶんよくない。だから簡単に外出許可も下りないのだろう。

それを勝手な判断で破ってはいけない。何かあったら悲しいし、天宮くんのお母さんにも申し訳が立たない。

立ちすくんでいると、彼がこちらに戻ってくる気配がした。

見上げた彼の顔は、先ほどまでのうきうきとした雰囲気が嘘のように真顔だった。

思わず息を止めて彼を見つめていると。

「桜の下で、夏生さんの写真を撮りたいんだ」