僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

二月になって、今年初めての雪が降った。

半日で学校が終わり、私はいつもより早めにH大附属病院に向かっていた。

頭上に差した赤い傘に、粉のような雪がはらはらと舞い落ちている。

地面に落ちたらすぐに溶けて消えてしまいそうな、柔らかな雪だった。

薄水色の空には日が照っているから、地面に積もりはしないだろう。

電停から病院へと続く大通り沿いの道を歩いていると、前方から見知った人が歩いてくる。

ベージュの傘を差した、天宮くんのお母さんだった。

ぺこりと頭を下げると、天宮くんのお母さんも微笑み足を止める。

天宮くんの病室に通うようになってから、お母さんともすっかり顔見知りになった。

天宮くんを交えて、三人で話をすることもある。

「いつもありがとう。今日は早いのね」

「はい、期末試験の最終日だったんです」

「あ、やっぱり試験中だったのね。彩葉ちゃんがここ数日来ないから、陽大寂しそうだったのよ」

天宮くんが寂しそうだったと言われても想像がつかないけど、天宮くんのお母さんが言うならそうなのかもしれない。

「雪がやんだみたいね」

天宮くんのお母さんが、傘を閉じた。

天宮くんのお母さんの言うとおり、いつの間にか雪がやみ、冴え冴えとした冬の青空が広がっている。

「ここのところね、陽大の状態がだいぶ落ち着いてるの。一時は薬物療法でもおさえられないくらいだったのに、奇跡だって主治医が言ってたわ。きっと、彩葉ちゃんのおかげね」

「いえ……。私、何もしてないですし」