僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「えっ、天宮くん、あの場にいたの?」

考えてみれば、接点がなかったとはいえ同じ小学校だった私達。

兄同士が同じ野球チームでもおかしくはない。

「じゃあ、日暈も見たってこと?」

「うん。もちろん、色までは分からなかったけど――」

どこか遠い目をして、天宮くんが言う。

「あのときのことはよく覚えてる」

残念ながら、私はというと、ほとんど覚えていない。

生まれて初めて見た日暈の印象が強すぎて、あとのことが霞んでいる。

お母さんに連れられてしかたなくお兄ちゃんの試合に行ったものの、勝ったのか負けたのかさえ記憶にない。

七回までノーヒットノーランだったのは、かろうじて覚えているけど。

たぶん、あのとき持ってたお兄ちゃんとの共有のスマホで、ゲームでもして遊んでいたに違いない。

「日暈は、〝奇跡の虹〟って呼ばれているらしいよ。見たらいいことがあるんだって」

以前に調べた日暈の豆知識を口にする。

「奇跡か。なるほど」

すると天宮くんが、子供みたいな笑い方をした。

彼がそんなふうに笑うのを初めて見たせいか、胸の奥の方がぎゅっと疼くようになる。

「もう一度、見れたらいいな」

図鑑の中の日暈を眺めながら、天宮くんが呟くように言った。