僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

気づけば年が明けていた。

その日は土曜日で、私は学校で借りた図鑑を病室に持ち込んでいた。

天宮くんに、色を教えるためだ。選んだのは『空の図鑑』だった。

雲や虹の種類、空に関係する現象が、写真とともにたくさん載っている。

ソファーの上に図鑑を広げ、色についてひとつひとつ天宮くんに説明していった。

うまく伝わっているのか分からないけど、天宮くんは楽しげに聞いている。

「あ、日暈だ」

虹のページをめくっていた私は、太陽の周りを白い輪が取り囲んでいる日暈の写真を見つける。


【日暈・ひがさ】
 別名、霧虹。霧によって光が散乱し、輪を描くまれな大気現象。ハロ(Halo)現象とも呼ばれる。


私がSNSでアカウント名にしている〝Halo〟というのも、日暈からとったものだ。

「ほら、前に言ったよね。子供の頃に日暈を見たことがあるの。この写真よりもっと色鮮やかだった」

「ああ、リトルリーグの試合のときだろ?」

天宮くんの声に驚いて、弾かれたように顔を上げる。

たしかに、あれは小四の頃、お兄ちゃんの野球の試合での出来事だった。

七回裏になってもノーヒットノーランの、暑いばかりの退屈な試合。

暇を持て余し、公園で遊んでいたときに日暈が出現したのだ。

とはいえ、あのときのことを、天宮くんにはそんなに詳しく話していないはずだ。

少なくとも、野球の試合のときだったなどとは言っていないはず。

「実は僕もいたんだ、あのとき。兄ちゃんリトルリーグに入ってたから、応援に行ってた」