僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「そうなんだ」

答えつつ、私は新たな不安にさいなまれていた。

天宮くんに、退院の気配はない。

以前、立て続けに起こった暗転症状を集中的に治療するために入院していると言っていたけど、まだよくならないらしい。

ひょっとしたらよくなるようなものではなく、入院はずっと続くのかもしれない。

彼は不自由しているような素振りを見せないから、端からは分からないけれど、たぶん視力は徐々に低下しているのだろう。

手にしたカメラ雑誌が逆さまだったり、光を探すようにぼうっと視線をさ迷わせたりしていることがあるから。

完全に失明したら? 

今は休学中らしいけど、そのまま学校をやめてしまうのだろうか?

入院中だということを、写真部のみんなやクラスメイトには秘密にしておいてほしいと言われたのも、少し引っかかっていた。

自分を忘れるよう仕向けて、学校からいなくなるつもりなんじゃないかって。

「夏生さんのこと、たくさん撮るよ。僕以上に夏生さんをうまく撮れるやつなんていないから」

私の不安をよそに、天宮くんが誇らしげに言う。

「うん、期待してるね」

彼を不安にさせないよう頑張って微笑んだけど、胸に渦巻いた不安は消えてくれなかった。