僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「あのときのこと?」

すると天宮くんが、うつむいたままポツリと言った。

「中一の夏休み前、泣きそうな顔で廊下を走っていた夏目さんとぶつかったとき、何も声をかけられなかったこと」

「あ……」

もしかして、トイレでかつてのグループの女子たちを出くわし、お弁当を手に逃げ出したあのとき。

――ドンッ!

勢い余って廊下でぶつかってしまった男子は、天宮くんだったの?

気が動転していて相手の顔なんて覚えていないけど、誰かにぶつかったことだけは今でもはっきり覚えている。

「あの人、天宮くんだったんだ……」

「うん。夏生さんが昼休みのたびにあそこに行ってること、ずっと知ってた」

それって、私がクラスに居場所をなくし、トイレでお弁当を食べていたことを知っていたってこと?  

恥ずかしいようなみじめなような気持ちが込み上げてきて、私はいたたまれなくなる。