僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

ためらいながらもドアを開ける。

消毒臭がほのかにする、病室独特の匂い。

開けっ放しのカーテンの向こうには、藍色と茜色が混ざり合った夕暮れの空があった。

ベッド、サイドボード、チェスト、ふたりがけのソファー。

サイドボードの上に、見慣れた一眼レフカメラが置いてある。

黒のルームウェアを着た彼は、こちらに背を向け、ベッドに横になっていた。

薄暗いのに電気もつけず、雑誌を眺めている。

私が一向に話しかけないからか、彼が不審そうにこちらを振り返った。

驚いたように目が見開かれる。

「え……?」

入院していると聞いてどんな状態なのか心配だったけど、そこにいたのは、私の知っている天宮くんと変わらない彼だった。

「天宮くんに会いたくて……」

気持ちが昂っているせいか、そんな本音を包み隠さず口にしてしまう。

すると天宮くんは、暗がりで見ても分かるぐらい顔を赤くして、おずおずとうつむいた。

やっぱり。仕草も、私の知っている天宮くんと何ら変わりがない。

それなのに、込み上げるつかみどころのない不安感は何なのだろう?

「どうしてここが分かったの? 先生には口止めしてたのに」