僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

まさかそんなことを言われるとは思ってもいなくて、私は狐につままれたような心地になる。

「この前はごめん、ひどいこと言って」

一瞬だけこちらをようやく私を見てくれた天宮くんの目には、こちらを慮るような色が浮かんでいた。

胸の奥が、じわりとあたたかくなる。

きっと、優しい人なのだ。

優しすぎるがゆえに、傷つきやすい。

私の返事を待たずに、高安くんは部室から出て行った。

昂る心臓の鼓動を感じながら、高安くんの上靴が、廊下の向こうに遠ざかっていく音にじっと耳を澄ます。

高安くんは、これきり学校に来ないかもしれない。

だけどそこは、重要ではないのだ。

高安くんが、自分の意思で、外の世界に向けて行動してくれた。

下手な写真に込めた想いは、ちゃんと彼に届いていた。

何者にもなれないはずのみじめな私が、ほんの少しだけでも、誰かを変えることができた。