僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている


そんなことを頭の中でぐるぐる考えているうちに、放課後になっていた。

今日も、写真部には行かないつもりだ。

教室を出て昇降口に向かっていたとき。

「夏生さん、待って!」

背後から、廊下全体を揺るがすような大声が響く。

階段の踊り場から、二階堂部長が階下にいる私を呼んでいた。

走って来たのか、肩を上下させ、激しく呼吸を繰り返している。ただならぬ気配だ。

「どうしたんですか……?」

階段を駆け降りてきた二階堂部長が、私の両腕をつかんで、息を荒げながら言った。

「今、高安が部室にいてる。教室には行かずに部活だけ来たんやって。夏生さんに言いたいことがあるからって、待ってるんやけど」

驚きのあまり、硬直する。あの高安くんが学校に?

信じられない気持ちで、二階堂部長と一緒に写真部の部室に向かった。

ぽっちゃり体系の男子が、空いているパイプ椅子に所在なげに座っている。

高安くんだ。

家の玄関の隙間からちらりと見たことがあるだけど、間違いない。

高安君はちらりと私を見て、すぐに視線を逸らした。

口を引き結び怒っているような雰囲気だけど、それがかなりの緊張からくる態度だということが、私には手に取るように分かった。

部活だけだとしても、ずっと学校を休んでいたのにいきなり来るなんて、不登校の子にはエベレスト登頂並みの大試練だ。

私にはそんなこと、無理だった。