僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

最終的に私が逃げ込んだのは、トイレだった。

ものを食べるのにもっとも適していない場所で、お弁当箱や箸の音をたてないように、事務的にオカズを口の中に放り込む。

何度目かの、トイレでのお弁当のあと。

洗面台で吐きそうになりながら手を洗っていたとき、もう長い間話をしていないあの五人が笑い声を響かせながらトイレに入ってきた。

私に気づいたとたん、口を閉ざし、見てはいけないものを見てしまったかのように視線を逸らす五人。

気まずい空気が流れる中、誰かが囁く声が耳に入る。

『ねえ、お弁当持ってない? ここで食べたのかな』
『え、きも』

その瞬間、トイレの窓の向こうに広がる青空も、七月のけたたましいセミの声も、何もかもが私の周りから消えた。

あとに残ったのは、心臓を握りつぶされたような痛みと、色と音を失った灰色の世界だけ。

顔面蒼白になり、逃げるようにトイレから出る。

慌てて飛び出したので通りかかった誰かにぶつかったけど、謝る余裕なんてあるはずもなかった。

次の日から、私は学校に行くのをやめた。