僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「夏生さん、ちょっといいですか?」

現国の水谷先生に突然声をかけられたのは、授業の終わったあとだった。

廊下に出るよう手招きされる。

二十代後半の、眼鏡をかけた真面目そうな水谷先生は、手に持ったファイルの中から作文用紙を取り出して私に見せた。

「この作文、すごくよく書けていましたよ」

「あ……」

『私の灰色の世界』――『十代の私の主張』をテーマに、少し前に書いた作文だ。

「実は今年からこういうのが開かれるんですが」

先生が、一枚のプリントを取り出す。三月にある、スピーチコンテストの出場者募集の案内だった。

近隣の四県在住の中高生を対象に開催されるらしい。

「書いてもらった作文の中から今何人か選出してまして、夏生さんどうですか?」

まさか自分の書いた作文が、そういうものの対象に選ばれるなんて思ってもいなかった。

驚いたあとで、苦い気持ちが、胸いっぱいに広がる。

この作文を書いたのは、少し前の、気持ちが前向きになっていたときだ。

だから不登校だった頃の自分の心情を、嘘偽りなく吐露することができた。

不登校だった私という人間を知ってほしくて。

世の中には、私と同じような不登校の子がたくさんいることを知ってほしくて。