僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「ていうか黒瀬、中一の二学期に引っ越してから音信不通になりやがって。幼稚園からの仲なのに、ほんとひどいよな」

「……今はもう黒瀬じゃない。天宮だ」

「え? 苗字変わったの? あー……」

苗字が変わった原因なんて、普通に考えて複雑な家庭の事情しかない。

山西くんはそのことに気づいたようで、言葉を濁した。基本デリカシーがないのに、気を遣うところでは気を遣う人らしい。

天宮くんは幼い頃にお父さんを亡くして、中一でお母さんが再婚したと以前に言っていた。

そのときに姓が〝黒瀬〟から〝天宮〟変わったんだろう。

「夏生さん、行こう」

「あ、うん……」

山西くんが怯んだ隙を狙って、私たちは彼の前から離れた。

「じゃあな、黒瀬!」

背中から山西くんの声が聞こえたけど、天宮くんが振り返ることはなかった。

とてつもないわだかまりを胸に抱えたまま、私も黒のパーカーの背中を追いかける。