僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

うつむき黙っていた天宮くんの空気が一変した。

「……そんなんじゃない」

「違った? 黒瀬、恥ずかしがんなって!」

山西くんは、天宮くんが黒瀬くんだと確信しているようだ。

山西くんが勝手に勘違いしていると思っていたけど、天宮くんの口ぶりも、山西くんを知っているようで……。

違和感を覚えた私の胸に、黒瀬という名前が引っかかる。

黒瀬? たしか、小学校のときそんな名前の男子がいた。

一度も同じクラスになったことがなくて、何となく顔と名前を知っている程度だったけど。

記憶の中からたぐり寄せた黒瀬くんを思い浮かべる。

黒髪で、背が小さくて、大人しくて――。

ちらりと私を見た天宮くんと、思い切り目が合う。

遠い昔に見た黒瀬くんの面影と、その顔が重なった。

天宮くんはすぐに私から目を逸らし、うつむいた。

いつもとは違う目の逸らし方から、彼の焦りがじりじりと伝わってくる。