僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

夏休み最後の日。

なんとなくまた不登校時代のSNSを開いてみた私は、驚きのあまり固まった。

数日前に、〝くろすけ〟からメッセージが届いていたのだ。

消えていたはずの彼女のアカウントが、いつの間にか復活している。

あの頃と変わらない、真っ白のプロフィール写真のままで。

《久しぶり。最近どう?》

まるで空白の一年半が嘘のように、あっさりとしたメッセージ。

学校にまた通い出した、と打とうとして私は躊躇した。

〝くろすけ〟がいまだ不登校なら、私が学校に行きだしたと知って、複雑な心境になるかもしれない。

不登校の子の心は、ガラス細工のように繊細で傷つきやすいから。

学校帰りの学生たちの声、親の必要以上の優しさ、学園もののCM。

そんなものだけで、心の傷を深めてしまうほどなのに。

でも、嘘はつきたくない。

《うん、そこそこ順調。》

学校に行くようになったことは濁して、簡潔に近況を伝えた。

数分後に、〝くろすけ〟から返信がくる。

《それならよかった。》

〝くろすけ〟の近況は、いっさいなかった。

気になりつつも、どんな返信をするか決める前に、もう一度メッセージが届く。

《ずっと笑っていて。》

唐突とも思えるその一文に、なぜか胸がざわついた。

《うん。くろすけも、元気でね。》

ようやく返せたのは、ありきたりなそんなメッセージ。

〝くろすけ〟からの返事はそれ以上なかった。