僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

天宮くんに色を教えるという役目は、私に思わぬ効果をもたらした。

色を認識できない彼に、どんなふうに色を説明したらいいか。

色辞典を見たり言葉を捻り出したりしているうちに、気づいたのだ。

この世には、驚くくらいたくさんの色が存在する。

――カシャッ!

そのことに気づくたびに、天宮くんの奏でるシャッター音が、耳の奥で鳴った。

そしてまるで花開くように、私の心に色の花火が咲くのだ。

灰色に見えていた世界が、ひとつひとつ色づいていく。

――『ねえ、お弁当持ってない? ここで食べたのかな』 『え、きも』

心の奥底に刺さったままだった重い刃が、色彩に少しずつ埋もれていった。