僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

だけど、お母さんが取り乱したことを後悔しているのには気づいていた。

『母さんだって僕と同じ人間だから、うまく伝えられないこともあるだろうって考えることにしたんだ』

完璧な人間なんかいない。それは大人だって同じだ。

私はお母さんに、完璧を求めすぎていたのかもしれない。

大事なのは、齟齬が生じることもあるけれど、お母さんが私のことをこの世で一番大事に思っているという事実。

天宮くんが言うように、それだけはたしかだとこの世の誰よりも身に染みて知っている。

「いただきます」

「どうぞ。あっ、味薄かったら言ってね。まだタレ余ってるから」

流しの水を止めて、お母さんがリビングにいる私を振り返った。

「薄くない、ちょうどいいよ」

「そう? それならよかったわ」

鼻歌を歌うような口調で答えると、お母さんは食器洗いを再開した。

「……ありがとう」

小さくつぶやいた言葉は、流しの水の音に掻き消えた。

私は天宮くんほど大人になれないから、今はこれでいい。