僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

だけど、キッチンでせわしなく動くお母さんの後ろ姿を見ていると、だんだん思い出してきた。

不登校時代、週末になるたびにいろいろなところに連れ出してくれたこと。

最初こそ学校に行けない私を責めてきたけど、だんだん何も言わずに見守ってくれるようになったこと。

精神的にまいっているはずなのに、私が部屋から出てきたら必ず笑顔を作ってくれたこと。

出かけるたびに、私が好きなケーキ屋さんのシュークリームを買って帰ってくれたこと。

そういう、お母さんの中途半端な優しさがつらかった。

お母さんの求める子供になれない自分が嫌で、苛立ちのはけ口を求め続けた。

今だって、お母さんのすべてを許したわけじゃない。

――本当は働きたかった、あなたが普通の子でいてくれさえすれば。

一度きりだけど、過去に言われたその言葉は、いまだ胸の奥深くに沈殿している。