僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「じゃあ、私は先に行くわね。時間までには帰ってくるのよ」

「分かった」

天宮くんのお母さんは、最後にもう一度私に向かって頭を下げると、駅の出口の方に遠ざかっていった。

先ほど感じた違和感が気になって、その後ろ姿を目で追ってしまう。

出口の階段に差し掛かる寸前、天宮くんのお母さんが右手で顔を拭った。

泣いているように見えてドキリとしたけど、天宮くんのお母さんの姿はすぐに見えなくなったから、はっきりとは分からない。

勘違いかもしれない。

天宮くんは、バツが悪そうにうつむいていた。

耳だけでなく、首筋のあたりまで真っ赤だ。

家の外で家族にたまたま会う恥ずかしさはよく分かるから、私は見て見ぬフリをした。

「優しそうなお母さんだね」

「うん。ちょっと過保護で……。ほら、僕が特殊な病気持ちだから」

特殊な病気とは、色覚障害のことだろう。