僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

女の人が、ますます天宮くんに近づいてくる。

「あれ? どうしてこんなところにいるの? 午後から――」

天宮くんの向かいに立つ私を見て、言葉をのみ込む女の人。

小さく息のような声を漏らしたあとで、なぜか微笑ましげに目を細められる。

「お友達?」

「……うん。同じ部活の子」

「あらそう。母です。いつも陽大がお世話になっています」

え、お母さん……?

「あ、こちらこそ……お世話になっています」

天宮くんのお母さんに倣って、私も慌ててペコリと頭を下げた。

動揺のあまり、少し声が裏返ってしまった。

動揺している天宮くんが、普通の高校生の男の子っぽくてかわいく見えてしまう。

天宮くんのお母さんは、にこにこと私を見ていた。

穏やかで優しいお母さんといった雰囲気の笑顔。

だけどその目の奥にふと、天宮くんが時折見せる寂寥によく似た色を見つけて、一瞬胸がざわついた。