僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

どうしたらいいか分からず、私は速攻で断った。

誰と誰が付き合っているなんて話をときどき耳にしたことがあるけれど、まさか自分の身に降りかかるとは思っていなかったから、驚いて逃げ出したっていうのが真相だ。

翌朝学校に行くとその話がなぜか広まっていた。

いつもの女子グループの、いつものお弁当の時間。

『なんで断ったの?』って聞かれて、とっさにこう答えた。

『タイプじゃなかったから』

本当は〝付き合うってどういうことか分からなくて不安だったから〟が正解だ。

だけどなんだか恥ずかしいのと、早く話が終わってほしいのとで、とっさにドラマかなんかで耳にした言葉を口にしていた。

あはは、そうなんだ。

へえ~、ならしかたないね。

そんな軽い受け答えで、その場は流れたように思う。

だけどその頃から、みんなの様子が変わった。

とくにお弁当の時間、私以外の五人でばかり話が盛り上がるようになる。