僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

夜、寝苦しくて目が覚めた。

布団の上で何度も寝返りを打っても、なかなかまた寝つくことができない。

隣では、二階堂部長がスースーと熟睡している。

クーラーが効いていて、部屋の温度は快適だ。

それでもこんなに寝苦しいのは、きっと慣れない一日を過ごしたからだろう。

不登校だった頃は、こんなふうに学校の人たちと泊まりに行くなんて、はるか遠い次元の話だったから。

気分転換でもしようと、ジュースを買いに廊下に出る。

たしか、廊下の突き当りにある階段の前に自動販売機があったはず。

節電のためか、深夜の今、廊下の電気はところどころしかついていない。暗くて怖かったけど、自動販売機の煌々と光る明かりを目指し、廊下を早足で進んだ。

「あれ? 天宮くん?」

ようやく自動販売機に着くと、横に置かれた長椅子に天宮くんが座っていた。

黒のハーフパンツに白のTシャツという部屋着スタイルで、オレンジジュースのペットボトルを手に物憂げな表情をしている。

彼も驚いたように私を見ていた。

だけどすぐに、いつものように視線を逸らされる。

「眠れなくて、ジュース飲んでた」

「私も眠れなくて、飲み物買いに来たの」

レモン入りのミネラルウォーターを買って、天宮くんの隣に腰を下ろした。

三人掛けの長椅子でひとり分開けた、遠いようで近い距離感。