僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

ひとりの子が、天宮くんに聞こえないように注意してか、声をひそめて言った。

「私、中学一緒だったんだけどさ。天宮くん、絶対明城(みょうじょう)高校行くって言われてたんだよね。なのにこの高校で見かけたときは驚いたよ。だってほら、この学校、明城行けるような人が来るところじゃないじゃん」

明城高校といえば、偏差値七十越えの超難関校だ。

写真ばかり撮ってる天宮くんが、そんな頭がいいなんて思いもしなかった。

「おーい、夏生さん」

驚きのあまり固まっていると、天宮くんと話していた男子が私を呼ぶ声がする。

「天宮が夏生さんに用だって」

天宮くんが、じっとこちらを見ていた。

いつもは挙動不審でどことなオタク感が抜けていないのに、教室で見る雨宮君はわりと普通な印象を受ける。

顔も整ってるし、こうやって見るとけっこうかっこいい。女子たちがざわついている気持ちも、少し分かる気がした。