すると、翔は履いている上履きを脱いで愛里紗の足に自分の上履きを片足ずつ履かせた。
愛里紗は予想外の展開に驚く。



「とりあえず代わりにこれ履いて。そうすれば、少しは気分が落ちつくかもしれないから」



愛里紗は翔の優しさに触れた途端、頬に流れていた涙がピタリと止んだ。

先程まで翔が履いていた上履きの温もりが足のつま先までじんわり伝わった瞬間、情けなさと申し訳なさで胸がいっぱいに…。



翔は愛里紗の足に上履きを履かせ終わった瞬間、怒りでワナワナと身を震わせながら、クラスメイトに向かって、まるで犯人に言い聞かせるかのように怒鳴り始めた。



「誰だよ、江東の上履き隠した奴は!」



翔の声が教室内に響き渡ったと同時に緊迫感が生まれた。
先ほどまで騒々しかった教室内は、一気にシンと静まり返る。

普段から口数の少ない翔が感情を露わにすると、クラスメイトは不穏な空気に包まれた。



「犯人出て来いよ!上履きを隠された江東の気持ちになってみろ!江東がなんか嫌な事をしたのかよ!早く上履きを返せよっ……」



翔が感情を顕にしながら顔を真っ赤にして怒っていると……。



ガラッ……



「一体何があったの?」



廊下を歩いていた担任が翔の声に反応して、顔色を変えながら教室内へ入った。