ーー咲が病院へ搬送されてから、どれくらい時間が経ったのかわからない。


私は保健室に身を残したまま。
ベッドにお尻を根付かせている。
時間と共に気持ちは落ち着いてきたけど、咲の事が心配で頭の中が目一杯に。


すると、事故報告を終えたばかりの木村は、保健室の扉を開けて顔を覗かせた。



「江東。……大丈夫?」

「……ん」



傍で静かに見守っていた養護教諭は、木村の到着と同時に手元の書類から目を外す。



「江東さん……。後で連絡するから、今日は帰りなさい」



だが、愛里紗は木村に目をやると、まるで事故直後にフラッシュバックしてしまったかのように再び取り乱す。



「咲はっ……、咲は、何処の病院に搬送されたの?いま応接室で話を聞いて来たんでしょ。ねぇ、早く教えてよ。一刻でも早く病院に向かわなきゃ」

「落ち着けよ。駒井ならまだ検査中だろ?」


「行かなきゃいけないの。咲が心配で何をしていても気が気じゃないし耐えられない。……検査が終わった後でもいいから、咲に直接謝りたいの。ねぇ、お願い。居場所を教えて」

「そんなにすぐ面会出来る訳ないだろ。今日一日は安静しなきゃ無理だろ。せめて明日にしろって!」


「…今日じゃなきゃダメ。たとえ意識が回復していなかったとしても、『ごめん』のひとことを伝えなきゃ。咲に酷い事を言ったから、謝るまで自分の気が治らないの……」

「江東……」

「……参ったわね」



一心不乱に木村に詰め寄る愛里紗を見た養護教諭は、降参したように咲が搬送された病院を教えた。