ーー春の日差しが燦々と降り注ぎ、校門に立ち並ぶ桜が新緑へと衣替えをしている五月下旬。

金曜日の学校の帰り道に愛里紗は言った。



「明日は土曜日だし、今日はうちに泊まりに来ない?」



このように、咲に突然お誘いする事が多かった。
急なお誘いでも、泊まりの準備をしていなくても、彼女は泊まりに来てくれる。

私には兄妹がいないし、母親も咲が遊びに来てくれる事を歓迎してくれる。



「誘ってくれてありがとう。…でも、今日は彼と初デートなんだ。せっかく誘ってくれたのにごめんね」

「そうだったんだぁ!咲はずっとこの日を楽しみにしていたもんね。良かったね。楽しんできて!」


「うん。ありがとう。…また今度誘ってね」

「いーのいーの!私なら全然大丈夫だから」



本音を隠して気丈に明るく振る舞ってみたけど、駅の改札で反対方向のホームに向かう咲にバイバイした後はガックリと肩を落とす。



咲とは今まで恋人のように仲良くしていたのに、彼氏が出来た途端に遊べなくなっちゃうのはちょっと寂しい。

まるで長年付き合っていた恋人にフラれたような感覚に。



本当は親友として彼氏とのデートを素直に喜んであげればいいんだけど……。
普段から二人きりで過ごす事が多かったせいか空虚感に襲われた。