愛里紗は以前咲の家に泊まりに行った際、咲の自宅の最寄駅付近にある人気のイタリアンレストランに二人で一緒に行った事を思い出した。



「わかった!もしかして最寄り駅の近くのイタリアンの店じゃない?あのお店はパスタもサラダも美味しかったよね」

「……あ、うん」


「咲の家から少し距離があるから二人であのお店に行ったのは一度きりだったね。でも、あの店で働いてるなら、今度咲が働いてる所をこっそりと覗きに行ってみようかな〜」



なぁんて軽く冗談を言ったつもりだった。
でも、次の瞬間……。



「それは…、ダメッ!!」

「えっ………」



突然悲鳴混じりの声。
勿論、レストランに行こうとしたのは軽い冗談のつもり。

それなのに、咲は店を覗きに行こうとしている事を頑なに拒んでいる。



だが、咲は愛里紗の仰天した表情を見た瞬間、ハッと目を覚ましたかのように我に返る。



「あっ、ごめん。そんなつもりじゃ……。ただ、働いてる姿を人に見られるのが嫌で」

「…そうだよね。頑張ってる姿を見られるのは恥ずかしいよね。こっちこそごめんね」


「ううん…、ごめん」



咲は謝ると暗い顔で俯いた。



ーーそう。

彼女は自分が働く店に来て欲しくない秘密があった。