ーー谷崎くんが街から姿を消してから、二カ月目。


中学校の新品の制服はぶかぶかでまだ着慣れない。

新しい学校に、新しい友達。
毎日が新しいもの尽くしだけど、気分は谷崎くんと別れたあの日のまま。



彼が引っ越してから一日も欠かさず神社に通った。

思い出がたっぷり詰まっている神社に行けば、また彼が無邪気な笑顔で私を待っていてくれると思っていたから。



昨日……。
そして、今日。

毎日小銭を賽銭箱に入れて、彼がこの街に戻ってくるようにと両手を揃えて参拝した。



会いたい。
声が聞きたい。
私だけに向けてくれた特別な笑顔をまた独り占めしたい。

親が離婚したからお別れだなんて急に言われても、理解も納得もできないよ。




神様。
もしこの世に存在するのなら、彼をこの街に返して下さい。


お別れなんてしたくなかった。
ずっと一緒に居たかった。
会えなくなってから毎日が苦しくて切なくて、今にも心が壊れちゃいそうだよ。


恋は一人じゃ出来ないんだよ……。




毎日神様に向かって呪文のようにそう唱えて、手に豆が出来そうなほど両手に力を込めた。




そして……。
今日もポストの前で届かない手紙を一人で待ち続けている。
ポストの中を一日に何度も確認しても、彼からの手紙はまだ一通も届かない。



手紙を書いてくれるって約束したのに、どうしたんだろう…。

もしかして、進学を機に部活や勉強が忙しくて、私との約束を忘れちゃったのかな。
新しい街に引っ越したから、私の事なんて忘れちゃったのかもしれない。




今夜布団に入って眠りについたら、明日は会えるのかな。
若しくは、あさって目が覚めたら谷崎くんが突然目の前に現れたりして。



谷崎くんの方から手紙を書いてくれないと、今どこに住んでいるかわからないよ。


会いたい。
会いたい…。
会いたくて仕方ないよ。



来る日も来る日も…。
翔のいない喪失感に打ちひしがれて涙でまつ毛を濡らす日々が続いた。