ーー雪がより一層降り注いだ、始業式の日の午後。

午前日課で帰宅した私達は、家で昼食を済ませてから神社の鳥居下で待ち合わせた。



午前と比べて気温が一層下がり、しっとりと頬に吹き付ける風に痛みを感じる。
傘に積もる雪を傘の内側から指で弾き落とし、シャリシャリとしている雪を長靴で踏みつける。

年に数回程度しか降らない雪を自分なりに満喫しながら神社へと向かった。



先に到着していた彼は、真っ白な雪景色に包まれて腕を組んで寒々と身体を揺れ動かしながら鳥居の下で待っている。

赤く染まった鼻頭と頬は長く待っていた証拠。




彼の元へ一心不乱で走り行く私には、降りしきる雪なんて視界の外。

彼は雪をザッザッと踏みつけながら駆け寄る足音で私に気付くと、持っている傘をグルリと傾けた。



「ゴメン、待たせちゃった?」

「大丈夫。そんなに待っていないよ」



最も恋人らしい会話にちょっとばかし照れ臭い。
普段の調子で振舞ったのに、恋人になってから恥ずかしくてお互いの顔を直視できない。

些細な会話でも胸がドキドキして寒さなんて感じない。



頭いっぱい胸いっぱいの私だけど、傘を持つ彼の赤く悴んだ手を見てようやく本来の目的を思い出した。



「今日、谷崎くんの誕生日でしょ?」

「…知ってたの?」



彼が驚くのも無理はない。

何故なら彼は自分の誕生日を一度も口にしなかったから。
私は自分の気持ちに気付いたあの日から、彼に関する情報を友達から嗅ぎ回っていた。

だから、彼に関するデータは既に頭の中にインプット済みに。