その日、セフレの男にドタキャンされてた私は、偶々見掛けた男に声を掛けたんだ。



 恐ろしい程の端正な顔立ちに見つめられたら、吸い込まれてしまいそうな漆黒の瞳からは目が離せない。




「女の抱き方なんか分からねー。」




 ....堂々と告白する童貞。



 こんな美形が⁉︎なんて目を疑ったが、ホテルでいざ行為に及ぼうとした時、私に触れる指先はぎこちなくて....




「いいよ、私が気持ち良くしてあげる。」




 性行為(セックス)の快楽は、一度味占めたら病み付きになる。



 そんな私の一方的な価値観を押し付け、その男の童貞を奪った。




「いきそうになったら言ってね。」



「ぅっ、わかんねー、けど、出そうな気がする。」



 本物の(うぶ)だった。男だったら皆、必ずしも抜いたことあるんじゃないの?







 仰向け姿の男を見下ろしながら、歴然とする経験値の差にクスッと笑みを浮かべた。


 腰を浮かせては振り下ろす。私のトロトロになった中で、男は初めての経験を得たのだ。









「今日はありがとう。...またね。」


 初体験に意識が朦朧とする男をひとり残して、お先にホテルからお暇する。




 またね。なんてあり得ないんだけどね。




 何処の誰かも知らない美男子(イケメン)くん。






「......。」




(さよなら.....。)