── そ、れ、な、の、に !



「へー。俺の厚意を無下にするんだ?」

「えっ……む、げに……?」

「する、の?」

「もちろんしません」


操られるようにして言葉が出た。

考えるより先に『従え!』と本能が言ったから。



「そう、それが正解」


にこ、と不意に笑いかけられて心臓が大きく動いた。

恐怖のあまり、本領くんが何をするに対しても大げさに反応してしまうみたい。



「かとーあみちゃん」

「っわ!」



腕を引っ張りあげられて体が宙に浮いたかと思えば、ストッと着地させられる。



「どうも、ありがとうございます。……ええと、どーしてわたしの名前をご存知で……?」

「知らないわけなくない? 敵対派閥、“天沢 雪の彼女”。ずっと前から目付けてたよ」