……先生、それ、ずるい。 そんな穏やかな良い声を。 優しい笑顔を。 私だけに向けられていると思ったら。 好き……に、なっちゃうじゃん。 「これからはみんなが起きていられる授業を目指します」 と、沢渡先生は教室の黒板近くの時計を見た。 もうすぐ授業が終わる時間。 カチコチと秒針が時を刻んでいる。 (もう少し、このまま……) 知らず知らずのうちに、願っていた。 一秒ごとに膨らんでいくこの気持ちが、きっとずっと大切な、きらめく青春の恋心なんだって、私にはわかったから。