「あ、詩乃ちゃん!」

「オージ先輩…っ」

「急にごめんね」

息を整えて、ベンチから立ち上がったオージ先輩の前に立った。

ずっと告いたかったのに、勇気がなくて()えなかった。


これから私オージ先輩に告白するんだ。


これでやっと()えるの。

やっとちゃんと本当にオージ先輩に…


()えるの?


「詩乃ちゃん、俺…詩乃ちゃんのこと好きになった」

「え……?」

真っ直ぐな視線で私を見てるオージ先輩の瞳には力が入り、想像してなかった言葉に一瞬戸惑った。

だってそれは私が言いたかったことで、オージ先輩から言われると思わないし、今も耳を疑うぐらい信じられない。

「えっと…」

「お菓子作り教えてとか絶対めんどくさいのに、俺のために一生懸命レシピ覚えてきてくれてさ…健気で可愛いなって、思ったんだよね」

私今本当にオージ先輩に告白されてるの…?

目の前で話してることは全部私のことなの…?

「そしたら好きになってた、詩乃ちゃんのこと。だから俺と付き合ってほしい」

本当に私…

返事を、すればいい?

私が告白するつもりだったんだけど、オージ先輩に告白されてる。

こんな状況夢にも見なかった。

そしたら私はその答えを…

言えばいいんだよね?

言えるよね?


私も好きだって…


言ったらいいんだっけ?


「…ごめんなさい!」

咄嗟に頭を下げた。

自分でもわからない。

なんでそんな風に答えちゃったのか。

だけど言えなかったんだ。

だって目の前にオージ先輩がいるのに浮かんでくるのは小鳩の顔ばっかりで。

ずっと頭から離れないの。

いつからこうだったの?

どうして私…


小鳩にチョコレートをもらって嬉しかった。


もらえたことがすっごく嬉しかった。

私のために、もうチョコレートは作らないって言った小鳩が、誰かのために作るのは嫌いだって言った小鳩が、私のために。

嬉しくて、嬉しいのに、胸が裂けそうなぐらい痛かった。

“がんばってください”

応援してくれた気持ちを叶えたくて走ったけど、それがこんなに苦しいなんて。



どうしよう、私小鳩のことで頭がいっぱいだ。