恋の♡魔法のチョコレート

「もうすぐ出来ますからお待ちください」

小鳩結都がエプロンを外した。

手慣れた手つきでささっとコンパクトに折りたたんで、何をするにも無駄がないんだなと思った。
まぁまぁ広い家庭科室の隅っこで、ぽつんっと作業してるのはちょっとだけ違和感だったけど。

「ねぇ、チョコ研って小鳩ゆ…っ、くん1人?」

「…気遣ってくん付けとかいいですけど」

「そう?じゃあ、小鳩…1人なの?部長やってるの?」

「2人です、部長は先輩がやってます」

「そうなんだ、だから研究会なんだね」

チョコレート研究会、通称チョコ研。

うちの高校では部員が3人以上なら部活に昇格できるシステムで2人以下の場合は研究会としての活動になる。
活動内容的にはこれといって差はないけど、マイナス面と言えば部費が格段に安いこと。
帰宅部の私にはあんまりわからない話だけど、それはそれは大きな差らしい。

「部長は今日はいないの?」

「……。」

「え!?何っ」

なんとなく気になったから聞いてみただけだったのに、顔をゆがめた小鳩がこっちを見ていた。

「そんな知りたいですか?」

「知りたい…!ていうか、会話の流れじゃない!?」

ちょっと心を開いてくれたのかもって、調子に乗ってどんどん聞いちゃったのがいけなかったっぽい。急に不機嫌な態度で睨まれた。

「…毎日活動してるわけではないので、今日は自由活動日です」

本当はこのまま、なんで敬語なのかも聞きたかったけどもう教えてくれそうにない雰囲気に負けてしまった。



小鳩、難しい。