恋の♡魔法のチョコレート

「チョコレートは海外では大人の嗜好品(しこうひん)とも呼ばれてるんですよ」

私から視線を逸らした小鳩結都が絞ったふきんを持った。作り終わった直後から片付けを始める手際の良さ、テキパキと動きも早かった。

「しこうひん?」

「どんなものを嗜好品って呼ぶかわかりますか?」

「え、まっ…待って!調べるから!」

「いや、わざわざ調べなくてもいいですけど」

ここで知らない!とは答えたくなくて、制服のポケットからスマホを取り出してすぐに“しこうひん”で検索した。

漢字で書くと“嗜好品”なんだ、それはなんとなく見たことあるかも。

「あ、出て来た!嗜好品!えっと…、栄養をとるためでなくその人の好みによって味わい楽しむ飲食物…?」

「そう、つまりは娯楽なんですよ」

「娯楽の…食べ物?」

「チョコレートもそのひとつです」

確かにお菓子だし、栄養とかそーゆうのは考えてないなぁ。おいしいから食べるが最大の理由だと思うし。

あんなに広げてあった道具や材料は瞬時に片付けられ机の上はゴミひとつなくキレイになっていた。

もう一度ふきんを水で絞った小鳩結都がキリっとした瞳で私を見た。

「食べてみますか?僕の作ったチョコレート」

予想外の言葉にドキッとする。

「え、いいの!?」

こんなにも早く願いが叶うとは思わなかったから。

やっぱり図書室で勉強して来た甲斐があったかも、あの土下座だって意味があったのかもしれない…!

心臓がドキドキして来た。

噂でしか聞いたことないチョコレートに会えるんだ。

「もうすぐ完成しますから」

「早いんだね、固まるの」

「薄く広げられるモールド使ってるんで20分ほどで固まります」

呼吸を整え、一歩踏み入れた。

初めてチョコレート研究会の部室に入った。