恋の♡魔法のチョコレート

日が暮れ始めた夕方5時半、窓の外が少しずつ暗くなっていく。

部活によってはチラホラと帰り始める人もいて、静かになっていく学校で保健室はどこよりも静かだ。

もう2時間くらい経ったかな。


まだ目を覚まさないのかな…


















静かにそぉっと目が開いた。

「小鳩!?大丈夫!?」

イスに座っていたけど思わず立ち上がっちゃった。

ガタッて音までさせちゃった、うるさかったかも。

「………。」

「あ、待ってねっ!琴ちゃん先生、今職員室行っちゃったの!たぶん小鳩のお母さんとやっと連絡繋がってっ」

「何してるんですか?」

「え?」

天井を見たまま一切視線を変えずに小鳩が口を開いた。

「小鳩急に倒れたから!びっくりしたよ!体調悪かったんだね!?ごめん、気付かなかったっ」

「別に気付かなくて謝られる必要はないですけど」

ゆっくり体を起こし、はぁっと息を吐いた。

天井から視線を変えた目を細めて真っ直ぐ前を見た。

「もう起きて大丈夫なの!?」

「…ずっとここにいたんですか?」

「え、うん?あ、頭は!?もう痛くない??」

「それも必要なかったです」

さっきの地に響くような声とは違って、落ち着いた静かな声だった。

それも淡々として、音の乱れもないような。

「うん…、そうだよね。ごめんね」

「別に謝らなくても」

「私が…いたかっただけだから」

小鳩がこっちを見てくれないから私も顔を合わせずらいな。

「てゆーか私のせいだよね、しつこくつきまとったから…ごめんね」

「………。」

「迷惑だったよね。ごめん、小鳩の気持ち考えてなくて」

軽いゲームみたいな感覚だった。

嫌いなものが好きになったら楽しいんじゃないかって、ちょっとしたノリで始めた。

私が勝ったら小鳩に魔法のチョコレートを作ってもらうって。

だけどね…

「楽しいかなって思ってたんだ。1人よりみんなでいた方が…、他愛もない話しながら過ごすお昼休みとか!そーゆうのあってもいいかなって…!」

“そこまでしてチョコレートが欲しいですか!?”

全部が全部そのためじゃなかったよ。

「小鳩…、友達いないって言うから」

「それ本人に言います?別にいいですけど」

もったいないって思ったから。

もっとみんなにも小鳩のこと知ってもらいたいって、思ったから…

でもそれが迷惑だったんだよね。