恋の♡魔法のチョコレート

「1個食べてみたら?」

リッツチョコを一口かじった琴ちゃん先生がまだ小袋に残っていたリッツチョコを小鳩に差し出した。

そのリッツチョコにみんなの視線が集まる。

「………、1つだけ頂きます」

熟考に熟考を重ねた小鳩が琴ちゃん先生からリッツチョコを1つ受け取って、渋々口に運んだ。

そんな恐る恐る食べなくても普通のお菓子なのに。

「どう?小鳩、おいしい?」

「………。」

「食べられそう?」

「……。」

「ねぇってば!」

「見た目通りの味です」

全然言ってほしい言葉じゃなかったけど、食べられなくもないしおいしくないわけでもないのかな…って勝手にそう解釈した。

「じゃあこれは?柿ピーのチョコ!」

だから勢いで次のも勧めちゃったりして。

「チョコポテトチップスもあるよ!」

すかさずそらぴょんもそれに応戦して。

「食べてみてよ!」

ズイズイと小鳩の前にお菓子を集めた。

「ミルクフランスもあるよ!」

どさくさ紛れに食べかけのミルクフランスまで集まって来た。

「そんなにいらないですよ!!」

まぁちょっと怒られたけど。

半強制的に押し付ける形で返されそうになるお菓子たちをぐーっと手で押し返した。

でも案外力あるよね、だてに毎日チョコレート作ってるだけはあるなって。

全然勝てないしっ

「もうそろそろ終わり~!」

それを見かねた琴ちゃん先生が止めに入った。

「柳澤さんも笹原くんも落ち着いて」

「「…はい」」

ふわふわしてても私たちと同じに見えてもやっぱり先生だった。

「もう授業も始まるし、片付けたら?」

時計を見ればもうすぐ予鈴が鳴りそうだった。
お菓子のゴミ片付けなきゃ、教室まで結構遠いんだ。

「琴ちゃん先生ありがと~、また来てもいい?」

「いいよ、いつでも」

「じゃあ明日ね!」

「そらぴょん気早っ!」

琴ちゃん先生に手を振る。

ありがとうって意味とまたねって意味で。

同じように琴ちゃん先生も振り返してくれた。

開けたドアから順番に出ていく、午後の授業なんだっけとか話しながら。

「あ、そうだ小鳩くん!ちょっといい?」

一番最後に保健室から出ようとした小鳩が琴ちゃん先生に呼び止められた。

何かなって思って足を止めたけど、小鳩に睨まれて止めた足を止めることを止めた。

そっか、小鳩からしたら私たちに待たれてもってことね。

体調のことかな?

それ以外琴ちゃん先生が呼び止める理由ないし、そしたら聞かない方がいいよね。

クラスも違うし、先に戻ってよう。