恋の♡魔法のチョコレート

ハァと息を吐く音が聞こえた。

これはまた追い出されるかもしれない。

「昨日の余りでいいですか?」

「え?」

「残りなんでそんなにないですけど」

小鳩が冷蔵庫からすでに開封済みの2/3ぐらい残った板チョコを取り出した。

「くれるの!?」

「…いらないんですか、これが不満なら別に」

「いる!いります!超満足です!」

絶対断られると思ったのに、思いの外素直で拍子抜けしてしまった。

どうぞと渡され、もらった板チョコ。

いつもの小鳩ならこんなことしないのに…

「実は小鳩も楽しみにしてた?」

「いえ、微塵も。早く帰ってほしいなって思いまして」

「あ、なぁーるー」

わりといつもの小鳩だった。それに加えてちょっとだけ学習した小鳩だった。

「メリーよかったね~!!!」

「う、うん!よかった!」

じゃあさっそく!とそらぴょんがチョコレートフォンデュの機械のコンセントを入れた。

もう一度ハァと息を吐いた小鳩はスクールバッグから取り出したエプロンを着て、自分の作業に取り掛かろうと冷蔵庫を開けた。

あくまで私たちとは別のスタイルってことね。

まぁ、いいか。

準備が出来て食べる時誘えばいいもんね!

誘えば、なんだかんだ付き合ってくれる…かもしれないしね!

「ねぇメリー、これスイッチ入れたらチョコレート入れちゃっていいの?」

「うん、そうじゃない?鍋になってるから溶けたら出来上がりなんじゃないの?」

「おっけ、じゃあチョコ入れ…っ」

「ちょっと待ってください!」

パシッと小鳩が板チョコを持つそらぴょんの腕を掴んだ。グッと止めるように、険しい顔で。

「え…、ゆいぴー何?どったの?」

「直接チョコレート入れる気ですか?」

「うん、だってチョコレートフォンデュだから溶かさないとじゃん」

「何も入れないんですか?」

「何も?って何を??」

きゅるきゅるするそらぴょんの瞳とは対照的に絶望の淵かと思うぐらいのげんなり顔で、はぁ~~~っと今度は長めに息を吐いて頭を抱えた。

え、何が?何がダメだったの!?