「好きじゃないの!?」

「はい」

そらぴょんだって私だってやましい気持ちでチョコ研に入ろうとしてるのは事実だけど、大前提にお菓子が好きってことがある。

だから何のやましい気持ちもない小鳩は純粋にお菓子が、チョコレートが好きなんだと思ってた。

「じゃあなんで小鳩は作ってるの?」

「好きだからです」

「…え?どうゆう?」

スタスタと歩いていく小鳩の後ろ姿を足早に追いかける。じゃないと追い付かないから。

「…作るのが好きってこと?」

ちっともこっちを気にする素振りなんてなく、前だけを見て歩き続けてる。

「食べるのは嫌いだけどってことなの?」

私の話を聞いてるのかも怪しい。

保健室は全校生徒の下駄箱の隣、玄関に近いところにある。そこから教室に戻るにはひたすら階段を上っていかなきゃいけない。

「………。」

甘いもの、苦手なのかな。確かに苦手そうな雰囲気してるよね。あの仏頂面で甘いもの大好き♡って感じしないもん。

「あ、わかった!」

初めて小鳩の足が止まった、階段を上る小鳩の足が。

「じゃあ好きにさせてあげる!」

振り返った表情はあの仏頂面だったけど。階段の上ってことでもっと高圧感たっぷりだったけど。

「…いや、何言ってるんですか」

「食べるのも好きだったら、部活ももっと楽しくない?」

「別に楽しくなくていいですけど」

「部活楽しくないの!?」

「そうゆう意味じゃないです」

仏頂面から呆れた表情に変わる瞬間、階段の下から小鳩を見上げた。

「ねぇ、もしそれでチョコレートを食べるのが好きになったら」

そして、にこっと笑って見せた。

「私にチョコレート作ってよ、小鳩の魔法のチョコレート!」