がんばって、そう言われてうんって頷いた。

でも何したらいいんだろう、今の私にできることって何なのかな…

ガチャっとドアを開けてマフラーを外してコートを脱いだ。

そのままダイブするようにベッドに飛び込んだ。

あぁ…自分の部屋って落ち着く。

家に帰ってくるとついやりたくなってしまう。

うつ伏せのまま目を閉じて、夢の世界へ行ってしまおうかと思った。

「………。」

でもやっぱり落ち着かなくて目を開けた。

“俺はメリーが好きな人と上手くいけばいいなって思ってるだけだから!”

そらぴょん、マジでいい子だな。

そんな風に思ってくれてたんだ。

体を起こした、ベッドの上に座ってヘッドボードの上に置いてある引き出しを開けた。

そらぴょんもがんばってたもんね。

私も、何かしたい…よ。

そっと開けた引き出しの中、ずっと開けられなかったあのチョコレートを取り出した。

“これ、もらってもらえませんか?”

ラッピングもあの時のまま、キレイに残ってる。

さすがにもう食べれれないよね?腐ってるかな?

「……。」

小鳩は、本当は誰にあげるつもりだったんだろう?

私が開けちゃっていいのかな…?

静かにリボンをほどいた。

小鳩の気持ちが詰まったチョコレートを開けるのはどうしても重くて、少しだけ手が震えた。

こんなに丁寧に包まれたチョコレートを渡せなかったなんて…

「わ、可愛い!」

パカッと箱を開けるとツヤツヤと煌めくチョコレートたちがキレイに並べられていた。

少し傷んでしまっていたけど、それでもどれだけ心がこもっていたかはちゃんと伝わってきた。

「あ、なんかカードが入ってる」

Congratulations!と書かれたメッセージカードが一緒に入っていた。

おめでとう?誰かのお祝いごと?

きゅっと胸が縮んだ気がした。

だけど…

「すごいなー、小鳩は」

煌びやかなチョコレートにはついつい見とれちゃって、ちょっとだけ頬が緩んでしまった。

「…いいなぁ」

もらえるはずだった人が。

どうして渡さなかったのかな、渡せなかったのかな。

「この形何って言うんだっけ?この葉っぱ、クリスマスの飾りでよく見るやつだよね」

何気なく自分の発した言葉にピタっと体が止まった。


………え?


クリスマス…?


“あ、そーいえば琴ちゃん先生っていつ結婚するの?前にもうすぐって言ってたよね!”

“そうねー、もうすぐだよ”

“えー、いついつ~?”

“12月25日だよ”


小鳩がこのチョコレートを作ったのは文化祭の前日、11月25日だった。

それなのにどうしてクリスマスモチーフのチョコレートにしたんだろう。

そんなの答えは1つしかなくて。


“クリスマスが誕生日なの”


あの日の小鳩の言葉が蘇る。

あの言葉に込められた意味を。

このチョコレートに込められた想いを。


”これでチョコレートは一切作りません”


小鳩は琴ちゃん先生に渡すつもりだったの?