「少し話しをしようか。」

そう翔さんが夜景が綺麗な展望台の駐車場で車を停める。
車内からしばらく2人無言で夜景を眺める。

「綺麗ですね。
そんなに大きな町じゃ無いのに、夜景がこんなに綺麗だなんて知りませんでした。」

「ホテルで聞いたんだ。デートスポットだって言ってたから。」
そう言って笑う翔さんは明らかに何かを決心した面持ちで少し心配になる。

「外、出て観てみますか?」

「外、寒いけど大丈夫?」
本当に寒がりなんだなと改めて認識して、
微笑ましくて笑ってしまう。

「ふふふっ、翔さんの唯一の欠点は寒がりだって事くらいしか無さそうですね。」

「果穂が風邪を引かないか心配になっただけだ。よし、外に出るぞ。」
そう言って気合いを入れるから、なんだか可愛いなと思ってしまう。

さっき買った手袋にニット帽、マフラーまで着けられてモコモコになって外に出る。

翔さんの方が寒そうだとマフラーを譲ろうとしたけど拒まれてしまう。
その代わりと言って私を後ろから抱きしめて暖をとっている。

「少しは暖かいですか?」

「うん。」
うんって⁉︎
翔さんみたいな立場の人がうんって言うのなんだか、可愛いな。

しばらくボーっと夜景を眺めていると、
翔さんが心なしか震えてる気がして心配になる。
「翔さん、寒いですか?そろそろ車に戻りましょうか。」

「いや、緊張してるだけ…。」
なぜ?首を傾けて考える。
「話したく無い話だったら無理に話さなくてもいいですよ。」

「いや、お兄さんと…亮太と約束したから早めに話すべきだって…ただ、果穂が目の前から消えてしまいそうで…怖くなる。」

なぜお兄ちゃんが私の知らない翔さんを知っているのか気になるし、そんな思いをしてまで話さないといけない内容って何だろ?

「私、翔さんの事好きですから、そんなに簡単に離れませんよ?」
ぎゅっと力強く抱きしめられてドキンとしてしまう。