「んじゃ、もう北條は授業もどって」
「お大事になー。行くか青石」
「青石さんは置いていって」
すぐにパシッと掴まれた私の手。
それを分かっていたように、北條くんはまた呑気な笑い声を上げた。
「俺さー、お前と普通に友達になりてえんだけど」
「嫌なんだけど」
「浅倉って友達いねーだろ?なってやるよ北條様が」
「いらない」
北條くん、なに言っても浅倉くんには通用しないと思う…。
こういう男の子同士にしかない独特の空気感というのは、女である自分には理解しがたいものだ。
入ることもできない。
それなのにどこか羨ましくもなる。
「てかもう友達みたいなもんだろ。こうやって運んでやったし、喋ってるし」
「…だって北條、お前は青石さんのことが好きでしょ」
「……は……?」
最近の私は考えてばかりだ。
ずっとずっと考えてばかりだから、すぐには理解ができなくて。
浅倉くんが転ぶことに対する違和感が前より膨らんだこと。
そんなものを今も考えていた私に、考えてもいなかった言葉が届いてくる。



