「…じゃあ、任せたぞ北條」
「へーい。行くぞ青石」
いつもの調子を変えないまま浅倉くんをおぶると、顎をクイッと動かして私を誘導した。
動揺するクラスメイトたち。
笑っている者と本気で心配している者で綺麗に分かれてしまった。
「助かったわ浅倉!!俺たちの作戦うまくいったぞ!!5限とかマジいちばんダリぃもんなー!」
「え、おい拓海!なんだよそれっ!!お前がいねぇとバスケ無理なんだけど!!」
「あっ、やべ。なんでもねーわ!じゃあ頑張れよお前ら!はっはっはっ!!」
「はあ!?ズリぃぞ拓海!浅倉!それに青石も!!」
なに……?
ちがうよね、北條くん。
きっとそれはみんなを和ませるためだけに言った嘘。
おぶられた浅倉くんも状況が読めない顔をしてるもん。
「…お礼なんか言わないから」
「はははっ、別に言ってもらえるとも思ってねーよ」
保健室にたどり着く前には浅倉くんはいつもどおりに戻っていたっぽくて、廊下で何度も「下ろせ」と言っていた。
けれど北條くんは最後まで彼をおぶったまた、結局は保健室まで。
まるでいつかの文化祭の仕返しのようなものをしているみたいだった。



