「───浅倉!」
と、響いた声に誰もがギョッとさせた。
息を切らして走ってくる体育教師は、授業を中断させてまで向かってくるものだから。
でも私が驚いたことはそこじゃなく、いつもは賑やかな北條くんがずっと真面目な顔をして浅倉くんを見つめていたこと。
「お前らは勝手に授業やっとけ。浅倉、どうだ?立てるか?」
「…ちょっと今は、手足が震えて力が入らないだけです、」
「そうか、無理はすんなよ」
手足が、震える……?
どうして力が入らないの?
誰だとしても疑問が浮かぶはずなのに、先生はすぐに納得してしまった。
「先生、俺と青石が運ぶよ」
そんなとき、ずっと黙っていた北條くんがしゃがみこんだ。
先生の手から受け取るように、浅倉くんの身体を支えながら一緒になって立ち上がる。
「先生まで心配すると笑えねーじゃん。なんか俺も頭いてぇし、保健室で浅倉と休んできていいすか」
なんとなくそれは「大事にはするな」と、浅倉くんの気持ちを汲んでくれた言葉に聞こえた。
そんな空気を察したのか、先生はこくりとうなずく。



