「おい浅倉っ、いまの転け方でイケメンに見られるのなんかお前か拓海くらいじゃね!!」
とある体育の実技では、変声期を過ぎた男の子の声が、気づけなかった私のぶんまで知らせてくれる。
跳ねるボールの音で大好きな人が転んだ音が消されてしまったから、私は隣コートから聞こえる声を頼りに真っ先に向かった。
「浅倉くん…!!」
「なんでこっちコート来てんだよ青石。ここ男子だぞ!」
「そんなのいーからっ!!浅倉くん怪我はない!?私の背中に乗って…!保健室運んでく…!!」
いまだに起き上がっていない浅倉くんの腕を掴んで、無理やりにも肩にまわさせる。
私の咄嗟に出た行動が過保護でやりすぎだとでも思ったのだろう。
クラスメイトたちからは笑い声が上がった。
「いい加減にしろよバカップル!!ただ転んだだけじゃねーかっ」
「つーか立てよ浅倉!おまえそんなに青石に抱えられたいのかよ!」
目障りだ、鬱陶しい。
そういう声が浅倉くんのSOSを消してしまう。
立てれるものなら立っている。
どうしてそれが分からないの。
今だって小刻みな呼吸を繰り返して、冷や汗を垂らす彼が震えていること。



