ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。





家族でチキン食べてるときも、考えてしまうのは浅倉くんのことで。

サンタクロースになって現れてくれないかなって。



「浅倉くん、」


「…なに…?」



青石 航平(あおいし こうへい)って人、知ってる?

前に教えた大学病院に勤めている先生なんだけどね、知り合いだったりする…?



「…ううんっ、なんでも!」



ちがうよ、そんなはずない。

あのとき震えた理由は、きっと浅倉くんが電話に出てくれて嬉しかったから。


“ここに生きてる”って思ったからじゃない。

あの壊れそうな女性がどこか儚げな彼に似ていたとか、そう思ったからじゃない。



「浅倉くん、次の授業サボろうよ」


「…俺は平気だけど、青石さんは大丈夫?」


「う、うん…!浅倉くんがいるからっ」



勉強についていける?と、心配されてしまった。

だけど分からなかったら学年上位の彼に聞けばいいだけ。



「図書室いかない?あそこなら授業中でもサボれるから!」


「いいよ」


「あっ、でも浅倉くんが行きたいところがあったら遠慮なくっ」


「…俺は青石さんがいるならどこでもいい」



まるでいつか消えてしまうみたいに。

彼はここに生きてるんだって、思ったからじゃない───。